「碧いブナ林」   2017 画用紙にアクリルガッシュ

5月初旬の奥多摩、ブナが点在する標高1500m付近の山の中。
ブナの他に、ミズナラ・サワグルミ・シオジ・カツラなどの大きな樹が目立ちます。
白い花をつけたオオバユキザサが林床を明るいイメージにしてくれますし、丸い葉で挟み込むように白い花を咲かせたムシカリも、下向きに垂れたサラサドウダンのピンクの花も、これから様々な植物がめまぐるしく開花を競う季節の到来を予感させてくれます。
平地より春が遅れてやってきた山では、木々の葉はまだやわらかく、すき間だらけのこずえに向けていっぱいに広がろうと、頑張って背伸びをしているようです。
この時期のカモシカは、冬の長い毛をもう少しで脱ぎ捨てようと言わんばかり、食糧不足で細身になった体の線が毛のすき間から見えるくらいの密度です。
昨年生まれの子供をつれた親が、ぐっと背伸びをして春の芽吹きの甘いごちそうをほおばろうとしている瞬間は、この親子の過去と未来を、自由に「創造」できる瞬間でもあると思います。
死と再生をくり返す野生の営みの中で、すべてが碧くまぶしい5月のブナ林は、なにもかも新しくて新鮮でわくわくします。
私が一番好きな季節です。