「ニホンザルとタイワンザル」   2011 イラストボードにアクリルガッシュ

タイワンザルは台湾の固有種であり、日本では逃げ出した(あるいは放された)飼育個体が、下北半島(1975〜)・伊豆大島・和歌山県北部(1949〜)で野生化しているのが確認された。
下北半島では2004年までに全頭捕獲、伊豆大島と和歌山では現在も捕獲駆除が続いている。

タイワンザルはニホンザルに比べて尾が大分長く四肢が黒っぽいのが特徴である。
同じマカク属のサルと交雑可能で生まれた仔にも繁殖能力があることから、在来のニホンザルの遺伝子汚染が懸念されている。
「純粋なニホンザル」と「本来の生態系」を守るため、和歌山県では多額の税金をタイワンザルとその交雑個体駆除に使っている。
半世紀にわたって和歌山の山野でニホンザルとして生きてきたタイワンザルたちは、今やそのほとんどが交雑個体(雑種)である。
見た目もそれほど違わず(尾が少し長いなど)タイワンザルかどうかを判断するのは難しい。
DNA鑑定までして、少しでもタイワンザルの血が混ざった個体は駆除するという徹底的な大規模事業に、各団体や一般人から批判の声も多い。

作品は、家族であるタイワンザルとその仔らを守ろうと、人間に必死に威嚇しているニホンザルの雄を描いたもの。